「あなたの人生の物語」

当時37歳 鑑賞

映画邦題「メッセージ」

テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語 Stories of your life」が原作で、私は先にそっちを読んでいた。

SF短編小説としては標準的なスタイルだが、とある小さなアイデアが現代科学に付け足されることで世界の在り方が大きく変わってしまう、そういう話だ。特にこの作品では、その「大きな変化」は主人公の頭の中だけで起きる。

そのアイデアは大変に秀逸なもので、私は大いに楽しんだものの、これを映画化するなんてとても信じられないという気持ちであった。

さて実際映画をみてみると、これはこれでなかなか良かった。小説の世界観を下敷きにした二次創作という感じで、大胆な脚色が加えられてちゃんと映画になっている。

映画を先に見てしまった人は、そういうつもりで小説を読まないと肩透かしを食うと思う。

映画ではここから盛り上がるところ、という場面で小説はほんの少し別のエンディングを迎えて終わってしまうからだ。

映画ではほぼ無意味な脇役と化していた「物理学者の男」が、小説ではちゃんと役割を果たす。言語学者と物理学者の組み合わせが明確に意味を持っている。映画見た後に小説版に興味のわいた人はぜひそこのところを味わってほしい。