プロの対価
当時35歳 思考プロにボランティアを強要したり「友達価格」で値引き交渉をすることの是非がしばしば話題になる。
自分なりに考えていたことがあるので書いておく。
素人は相場を知らない
相場を知らずにとんでもなく安い値段で依頼をされて腹が立つ、というような発言をみかけるのだが、素人が相場を知らないのは自然なことだ。
知らないから相談するのだし、知らないから依頼するのである。
世間一般で相場を知られていないような仕事とは、それだけクリエイティブな仕事だという証ともいえる。
誰にでも相場を知られているような仕事というのは、例えば飲食店やコンビニのバイトのようなものだ。(みたいなことを書くと突っかかる人がいそうだが、それらが悪い仕事だとは言ってない)
逆に、他の誰もやっていないようなまったく新しい仕事を生み出した人は、相場などというものはもちろんないので、自分で相場を作ることになる。
提供するサービスにどれだけの価値があるか、これを説明し、納得させるのはプロの側の仕事だ。
金額的に折り合いがつかなければ断るのもプロの側の仕事だ。
相場を簡単に伝える
原価がどれだけかかっているかとか、準備にどれだけ時間がかかるかとか、説明の方法はいろいろあるだろうが、料金とサービス内容を文章化しておき、仕事の依頼が来たら「まずこちらをお読みください」とすると簡単だ。
ブログで愚痴を垂れ流すくらいなら、せっかく同じ内容を書くならもう少し体裁を整え、次の顧客のための準備をしたほうが建設的だろう。
(実際のところ、ちゃんとプロとして仕事を回している人の多くは既にそうしているはず。単に、今のネットの仕組みだと「ブログの新しい記事」が広まりやすいというだけでは。)
「知らない、出来ない」という客に対して「知ってる、出来る」人がサービスを提供する、というのがビジネスだ。
客の無知に腹を立てるのもそれを書き散らすのも自由だが、そもそも無知な客を相手にすることこそビジネスの本質だ。
無知な客がいなくなった頃にはそのビジネスは消滅しているかもしれない。
同一サービス同一料金
料金をオープンにすることを嫌がる商慣習というのは古くからあって、今でも時々そういう人や意見を見かける。
おそらく「相手によって値段を変えることで利益を最大化する」という戦略なのだろうが、情報化社会の現代にこの戦略はかなり難しいと私は思っている。
ここは割りきって、事前に料金をオープンにしてしまうことをオススメしたい。
もちろん、「その時々によって料金が大きく違うので」という事情はある。
私が仕事を受ける時も、5万円だったり50万円だったりする。
そんな場合も、5万円ならここまで出来ます、50万円ならここまで出来ます、と事前に提示しておくことは出来るので、「今回の場合ですと30万円ですね」と、状況に応じた金額に交渉していくとスムーズだし、相場を知らない相手に腹を立てるようなことにもなりにくい。
30万円で仕事を受ける時に、50万円の内容を事前に見せておくことにはもう一つメリットがある。
「あれ?当然料金に含まれていると思っていた○○は?」などと後から言われた時に「それは50万のサービスには入ってましたよね?見せましたよね?」と責任範囲を明確にしやすい。
相手に選ばせる
選択にはストレスが伴う。「断る」というのも1つの選択であり、なんとなく後味の悪い思いをするものだ。
こちらのストレスを出来るだけ減らすには、相手に選ばせる、相手に断らせるような進め方を心がけるとよい。
具体的にはどういうことか?ひとことで言えば、先手必勝である。
「で、ご予算はいかほど?」 などと相手に聞くから、こちらの下限より低い値段を言われてうろたえるのだ。
相手が予算を口にするより先にこちらが見積もりを示せばよい。
もちろん、仕事の内容を詳しく聞かないことには、厳密な見積もりは出せない。
マネージャを雇う
自分で自分の仕事の料金を決めるのが苦手な人、頼まれると断るのが苦手な人というのはいるだろう。
私自身がそのタイプなので気持ちはよくわかる。
率直に言って 「プロに向いてない」 と一刀両断すると自分がまっぷたつになってしまうので、「交渉を誰かに任せる」という手法をオススメしたい。
似た仕事をしている友人同士で、お互いに相手のマネージャになる、というのも手だ。
そうすると、「自分が我慢すれば」ではなく、「自分の友人を守るため」という方向に思考が向くので、安い仕事を断りやすい。
もちろん、マネージャは報酬の一部をもらう。一定額ではなく歩合にすれば、お互いに利益を最大化するインセンティヴが働く。そうして交渉の練習を重ねると、自分の仕事の値段もしっかり決められるようになるかもしれない。
「お友達価格」とは
知り合いなんだから安くしてよ、というのも、条件次第だ。
これは一言で言えば裏メニューのようなものだ。もちろん、普段の仕事通りの成果を安く売ってはいけない。が、普段の仕事では出せないような割引条件を提示することはできることもある。
プロとして仕事を引き受ける際に「品質を保証できる最低限の金額」というのが当然ある。表に出る成果なら、次の仕事にもつながるので、品質の保証は重要だ。
例えば写真家ならスタジオ代、機材費などがかかる。スタジオ代をケチれば価格は抑えられるが写真の品質も下がるので、普段の仕事には必ずスタジオ代が加算される。
しかし、相手が友人で、クオリティが多少下がってもいいからスタジオ代を浮かせたい、という話になれば、写真家の名前を表に出さない、などの条件をつけて、裏メニューで仕事を受けることはできるだろう。これからも関係の続いていく友人だからこそ可能な約束というのはいろいろあり、そこへ交渉を持ち込むのが「お友達価格」ということだ。
他には、納期をやたら長くとることによって、閑散期や、他の仕事のついでに仕事を完了できれば価格を抑えられることが多い。