エレベータを押さえる

おそらく 1986 年のことだが正確ではない。これについては後述する。

僕の住んでいたマンションに友達が遊びに来て、一緒にエレベーターに乗った。

乗ってすぐ、僕は何かの用事を思い出してエレベーターを降り、「ドア押さえてて。」と彼に言った。

彼は言われるままにドアを手で押さえた。数秒してドアが閉まり始める。「えっちょっと！無理だよ！！」彼は慌てた。全力でドアを押さえているが、ドアのほうが力が強い。ドアが閉まりかける。指を挟みそうになって彼はぱっと手を離す。そこへ僕は足を差し込み、ドアはすっと開いた。

「ドア押さえてて」という指示で通じると思った事が通じなかった事、当然知ってると思っていた事を相手が知らなかった事が驚きで、僕は未だにこの瞬間をよく覚えている。カルチャーショックの一種とも言える。

子供同士の事なので、逆に相手が知ってて自分の知らない事ももちろんいろいろあったと思うが、それはあまり記憶に残らないものなのかもしれない。

出来事自体を鮮明に覚えているのに、その時の友人の顔も名前も実は思い出せない。確実なのは彼がマンション住まいではなかったという事だ。また、僕と知り合ったばかり事のはずなので、小学1年生もしくは3年生の1学期の可能性が高い。

（幼稚園へはバスで通っていて、周りに同じ幼稚園の友人は住んでなかった。小2はクラス替えがなかった）

小学1、2年生の僕のクラスには「さいとう」が4人いた。男子2人、女子2人だ。女子2人については全く覚えていない。男子のうちの1人は同じマンションに住んでて、よく一緒に遊んでいた。もう1人は少し離れた一軒家住まいだったので、エレベーターを腕力で止めようとしたのは彼だったかもしれない。定かではない。